エネルギー戦略の考察
                                                    2012年1月5日


  1. 日本のエネルギーの状況:


  昨年12月に南アフリカで開かれた COP17において、日本は、京都議定書(*)で定められた CO2などの”温室効果ガス”の削減義務に対し、すでに削減の技術的な限界を超えていることを理由に、この議定書の単純な延長を拒否し、2013年1月から、削減義務の無い”空白期間”に入ることになった。(1990年比で、6%削減、2020年まで25%)
  一方、政府は、今年の10月から段階的に”環境税”の導入による 税の一本化を予定している。(すでに実施されているガソリン税については、ガソリン価格は2004年度以降の約2年半で約4割上昇、ただしガソリン消費は抑えられていない。) この環境税は、化石燃料使用に対する”炭素税”のことで、ヨーロッパではすでに実施されている。
  日本の企業は、いわゆる”6重苦”(**)の一つである CO2削減などの環境制約のほかに、この”環境税”の重圧が掛けられることになるのである。


   * 京都市で1997年に開かれた国連気候変動枠組み条約第3回締約国会議(COP3、地球温暖化防止京都会議)で採択された国際ルール。先進国に 08〜12年(第1約束期間)の温室効果ガス排出削減を義務付けた。削減幅は90年比で日本6%、米国7%、欧州連合8%など。05年に発効した。2001年に米国が 離脱したほか、中国など削減義務のない途上国の排出量が増え、2011年現在では削減義務を負う国の排出量は世界全体の27%にとどまる。CO2排出トップ3の 中国、米国、インド は入っていないのである。

  ** 日本企業の6重苦: @ 円高、 A 法人税が高いこと、 B 労働規制強化、 C CO2削減などの環境制約、 (D FTA ・・・しないほうが良い)、 E 電力不足


  それゆえ、企業はますます生産拠点を海外にシフトせざるを得なくなり、エゼキエル書に書かれているところの「ツロ」の様相を呈してきた感がある。良い意味で言うなら、技術的、経営的な観点からは、ますます”鍛えられ”、優秀な「職人」の「漕ぎ手」がアジア中を駆け巡る状態となる。 これは、もう1段階上の「技術立国」である。
  しかし一方、国内産業は空洞化し、雇用問題などの重大な問題が深刻になっている。国家財政は瀕死の状態(世界で赤字国債一位)で、デフレ不況は続いている。

  この状況に加え、天災が追い討ちを掛けた。 昨年3/11に起きた 東日本大震災によって、原子力発電の著しい危険性が明らかになり、電力エネルギーについては 火力発電への転換、および、上記の理由により、化石燃料に対する代替エネルギーの開発がますますその重要性を増してきた。日本各地の原子力発電は、事故以来、新増設も、定期検査後の再稼動も困難なため、今年の4月までに順次 停止する。(関電など冬の電力供給規制中)




  2. 代替エネルギー ・・・ ”藻油”の開発状況:


  ・ 水力発電は別にして、太陽光発電、風力、波力、地熱などの自然系代替エネルギーの開発は、建設コストに対する発電量が低く、一般個人レベルやごく一部の地域を除いて実用になるめどは立っていないのが現状である。中東などの太陽エネルギーが豊富な一部の地域では、太陽光発電は急速に建設されているところもある。
  ・ 日本近海の海底にたくさん埋蔵している メタンハイドレートは”化石燃料”扱いであり、メタンはCO2よりも温室効果があり、危険物で、採掘の採算性も検討中の段階である。採取が本格化すれば、国内はもとより海外にも輸出できるほどの埋蔵量があるといわれている。
  ・ (常温核融合は、研究すら充分に行なわれていない。危険性も全くの未知数である。)

  バイオエネルギー系は、なによりも、化石燃料ではないので環境税(炭素税)がかからないメリットがある。 すでに、アメリカやブラジルなどで トウモロコシ、サトウキビなどを原料として大規模生産が行なわれているバイオエタノールが流通している。 日本でも 廃食用油や廃棄物処理のリサイクル運動と兼ねて、油を軽油の代替燃料に使うことがすでに実施されているが、依然として、大部分は 輸入植物油(ヤシ油やジャトロファ油)が、メチル化処理を経て、軽油に5%まで混ぜられ、ジーゼル燃料として販売されている。


  この中で、近年、急に脚光を浴び始めているのが、油を作る「藻」である。
  @ 光合成、あるいは、A 有機物の分解、により多量の油を生成する藻類が発見され、その量産性を見極めるテストランが各地で行なわれている。 藻類は成長が速く、菜種やアブラヤシの3〜15倍という生産性の高さが特徴。食料と競合しない長所もあり、バイオ燃料の生産に使う動きが活発化している。

  ・ 取り組みが進んでいる米国では、石油大手エクソンモービル(ロックフェラー系)が藻類のバイオ燃料生産に約530億円を投じる計画で、政府と民間合わせ1兆円以上の投資があるという。 米国には200社のバイオベンチャーがある。
  ・ 軽油はガソリンより燃焼効率がよく、環境規制の厳しい欧州では、新車の半分以上を軽油を燃料とするディーゼル車が占める。国内でも日産自動車やホンダがディーゼル車を発売する予定で、需要拡大が見込まれる。
  ・ 日本でも藻類バイオ燃料に関する研究は盛んになってきている。JX日鉱日石エネルギー(旧 新日本石油)、日立プラントテクノロジーとユーグレナの3社による共同研究や筑波大学、豊田中央研究所、デンソー、出光興産などからなる「藻類産業創成コンソーシアム」が発足しており、研究・実用化の検討が進められている。
  国内で行なわれているものは、

   @ 光合成系:

  1) New Strain X(NSX): クロロフィル(葉緑素)を持ち、CO2と光で光合成、体長は30ミクロン。特徴は細胞の柔らかさで、油が溜まると細胞膜が破れて滲み出るので油採取しやすい。(by.筑波大学名誉教授・前川氏、千葉大学、群馬大学、北九州市立大学などの研究者からなるチーム、09?年12月にスタート)
  国内 で採取した約6000種の藻類を1年以上かけてスクリーニングし、油脂の含有率が70〜80%と非常に高い藻類を他の種と選り分けて培養。培養池は昼間は太陽光、夜間はこのために開発したLEDで光を供給し、24時間培養水はポンプで循環させ、油の分離も簡単1ha当たりの作 業人数は4人(300haで1200人)、300haで首都圏の航空燃料消費分(40万kl)に相当。 各農家が”油田”を持てば、東日本大震災の被災地復興に役立つ先端技術となるという。’13年にはパイロットプラントを建設予定。
  農水省環境バイオマス政策課は、調査費などの支援として今年度は約18億円弱の予算を組んでいる。

  2) シュードコリシスチスpseudo choricystis ellipsoidea緑藻類): デンソーが設置した藻の培養施設(愛知県西尾市)で約350平方メートルの敷地に計3万3000リットルの培養プールがある。実験室でなく、屋外での本格的な実証実験は全国的に珍しいという。2008年3月に解散した海洋バイオテクノロジー研究所(岩手県)から、軽油に類似した 油を細胞内に作るこの使用権を獲得した。この藻を発見した同研究所の元研究員蔵野憲秀さんもデンソーに移り、同社はゲノム(全遺伝情報)をほぼ解読、国際特許を出願中。 実証実験では、善明製作所で排出される二酸化炭素(CO2)や排水を使って藻を培養。約2週間後に収穫した藻を加熱するなどして油分を抽出し、軽油として使える油を年320リットル生産。13年までに軽油の量産に乗り出す。(年に計80トン)。軽油の大量生産については、国内の石油化学メーカーなどと共同で研究する予定。
  ただし、現時点では藻の殻から軽油を取り出すコストなどがかさみ、原油から精製した軽油より割高になるため、生産コストの引き下げが課題になる。

  A 有機物分解系:

  オーランチオキトリウムAurantiochytrium、光合成を行わない従属栄養生物と呼ばれる藻類): (by.筑波大、東北大と共同、下水処理施設「南蒲生浄化センター」(宮城野区)) 下水処理の廃熱で30℃前後に保ち、家庭から出た下水(有機排水)に含まれる有機物を吸収して増殖し、オイル(直接、スクアレン=石油系)を生産する。 また、オイル抽出後の二次処理水に対し、ボトリオコッカスを用い、光合成によるオイル生産を行う。 10年後をメドに実現する見込みという。


  以上が油を作る藻の状況であるが、ここで、国内で藻類を栽培することで注意しなければならない点がいくつもある。
  1) コストの問題
  2) 安定供給の問題
  3) 1年を通して、本当にそんなに油が採れるのか?
  4) 田の使用に伴う問題

  まず、藻は 雑菌に弱い。 テストプラントでは、水槽にビニールをかぶせて他の菌類の侵入を防いでいる。雑菌が入ると、藻の細胞が死滅するか、油を生産しない種類の藻が増えることになる。 これは 工場、あるいは、半工場では可能だろうが、すべての田んぼにビニールシートをかぶせるのはコストがかかりすぎて不可能だろうと思われる。 また、藻は多くの種類の中から油を多量に生産する株のみを集めて増やしたものだから、繁殖力は旺盛でも 寿命が短い藻類の細胞は、突然変異で油生産量が激減し、たとえば翌年には油を半分しか生産しないというような事態が起こりうる。数年おきに新しい株と入れ替える必要があるかもしれない。もちろん、今までに 油を長期間生産したという実績はどこにも無い。(確認だけで10年かかるということ)
  また、藻を育成した田んぼは、おそらく油だらけになるだろうから、周りの川なども含めて、公害の発生が懸念される。また、田んぼを元の状態に戻すためには 油が分解するまで数年かかるだろうと思われる。これでは、農家の人も誰もやりたがらないだろう。
  上記の数字は、夏季の瞬間風速のデータであり、1年を通しての平均生産量はもっと少ないはずである。藻の最適育成温度は25−30℃。 温暖な沖縄で採れた物だから、冬季に凍結すると死滅してしまわないだろうか。

  したがって、アメリカやブラジルのように広大な土地があって、通年 温暖な気候であるならばなんとか可能と思われるが、現状の日本ではどこかに無理が出て、結果的には採算が合わないだろうと考えられる。 強気の試算でも、10年後の量産時に、50〜80円/リットル と見積もられているが、実際はこれ以上で、現在の軽油よりも高くなると考えられる。




  3. 輸入植物油:

  上記、藻の油の開発状況から、少なくとも10年間は、油を量産できる体制に持っていることは不可能である。(おそらく10年後も無理だろう。)
  一方、日本の代替エネルギーのニーズは、原子力発電による電力供給が今年の4月にはすべて終了し、火力発電に移行する必要から、きわめて逼迫している状況である。
  また、石油資源の政治的問題、石油価格の高騰、そして、上記の ”環境税”の導入時期が迫っていることから、残る選択肢は非常に限られたものになる。

  ヤシ油などの植物油は現在の時点で、安定した生産と輸入の実績がある。 従来、石鹸の製造に用いられてきたが、近年は、メチル化処理を行い バイオジーゼルとして軽油に5%混ぜて販売されている。ただし、ヤシ油等は、生産性に限度があり、産出国で労働問題も発生している。また、食品でもあるので、トウモロコシやサトウキビからバイオエタノールが作られる場合のように市場が競合する。


  そこで、温暖な地域でしか育たないが、ヤシ油よりももっと生産性の高い”油の木”が交配によって作られ、すでにテストプラントで実績があるという植物油が有望である。これは、インドネシアの Y氏が開発し、東南アジアやアフリカなどの温暖な地域であればどこでも育ち、多量の油を生産することができるというもので、長期的に見ても、日本ばかりでなく、中国やヨーロッパへに輸出するシステムが出来上がると、世界的に見ても大変有望なエネルギー源になる。
  油の質は、二重結合が3つ入っている α−エレオステアリン酸が50%なので、融点が低くハイカロリーで、そのままでも(ジーゼル機関、火力発電所などのボイラーなどの)燃料に使用可能である。(日本やヨーロッパでは法規のため、ジーゼル機関にはメチル化しなければならないが) 実際、ジャカルタのバスは純植物油で走っている。 また、これは食用には向かないので、市場は競合しない。

  ここで最も重要なポイントは、どのくらい生産性が高いかということである。 Y氏が Y州に持っている 20 ha のテストプラント農園での実績によると、密生させないで植えて、1ヘクタール当たり1年で 20トンの油(2010年の実績: 200本の木/ヘクタール = 100kgの油/木1本)にもなった。これは、ジャトロファの20倍、アブラヤシの4倍である。 しかも、実を丸ごと破砕後、絞って浮いた油を分離するだけであり、絞り汁の6割が油である。ヤシ油採取のような手間はかからない。ヤシの木は劣化するので 7年ごとに切って捨てる。この油の木は特に劣化する要素が無いので 木の寿命で200年もつといわれる。
  実の35%出る絞りかすは、炭化して炭の粉にし、そのまま燃料となるだけでなく、コークスがわりに製鉄などに混ぜることができる。炭素税はもちろんかからない。
  さらに、このテストプラントでは、植え付けは1本につき平均 7m四方で、非常に余裕をもって植えているが、実質必要な面積は3m四方程度である。(さらに、4−5倍程度の収量になりうる)
  もっとも、Y氏は 160万haの土地を確保しているので、このテストプラントと同じように疎に植えても、日本の原発廃止の上乗せ分 約4億バレル/年の半分 2億バレル/年を輸出できる。
  1年間単位面積あたりの太陽エネルギー収集量で単純比較すると、次の表のようになる。(”油の木”は植え付け1本当たり7m四方として)

  

  確かに 藻の油は数値は高いが、設備投資や管理コスト、生産の安定性を考えると、やはり最終的なコストは高くなる。 太陽電池は建設コストが非常に高い。
  したがって、輸送コストを入れても、本命は、この”オイルの木”であると言える。


      →   インドネシア油事業立ち上げについて、       バイオジーゼルの実験




  4. 終末の異常気象への対処:


    「 ・・・ しかし終わりが来たのではありません。 民族は民族に、国は国に敵対して立ち上がり、方々に ききんと 地震が起こります。 しかし、そのようなことはみな、産みの苦しみの初めなのです。・・・ 」 (マタイの福音書 24章7、8節)


  政治的な問題があっても、石油資源そのものが枯渇するというのはデマであるが、石油(また石炭などの化石燃料)消費が地球温暖化に与える影響は、やはり大きい。南アフリカで開かれたCOP17の最中にデモがしばしば起こったのも、近年、特に、アフリカで大干ばつが起こっているからである。
  現在の世界の平均気温が 4℃上昇すると、世界中で大干ばつが起こり、世界の人口の9割が死滅する、という計算がある。

  聖書に書かれている終末の出来事のうち、最初に起こることは、資源ナショナリズムや保護貿易を含む 著しい民族主義と、世界各地の地震と飢饉(マタイ24章)である。(まだ、終末中期〜後期の「天変地異」の時期ではない)
  異常気象になると、中〜高緯度地方では、冷害・日照不足、低緯度地方では干ばつと大雨となり、全体的に天候の変化量が大きく揺さぶられ、特に 食料や飼料となる農作物の不作による大飢饉が各地に起こると考えられる。(南極の氷が溶けて海面が上昇するということは無く、南極での降雪が増えるので 逆である)
  熱帯地域での海面温度上昇は、東西循環(ウォーカー循環)の状態に異常をもたらし、熱帯地域の天候を大きく変えてしまう。そのうち最も大きな影響を与えるのがエルニーニョである。これは、ペルー沖(熱帯 かつ 非常に海域が広い部分)の海面温度が上昇し(そのため カタクチイワシが不漁)大規模な上昇気流が発生して広く東西に影響を及ぼす。ラニーニャは逆に海面温度が下がって下降気流ができる。(2011後半ー現在:ラニーニャ、日本は寒い)
   
  インドネシアでも、1990年代の後半に 数年間、干ばつが襲ったが、これはY州と反対側の ボルネオ島、スマトラ島であり、大規模な焼き畑農業や乱伐によって被害が大きくなったものである。インドネシア政府はこれに懲りて、現在は森林などの環境保護に力を入れ、厳しく監視している。特に、Y州はほとんど原始林で 干ばつになったことはなく、Y氏(クリスチャン)も環境保護には非常に注意している。木材の伐採は、間伐材のみ。



  どのようにしても、終末の時は来るのであるが、その変化を少しでも緩和し、また、クリスチャンが「平和を作る者」として あかしすべき時期でもある。
  そして、みことばにあるように、「産みの苦しみ」の後の、終末の大リバイバルへ向けて、具体的に準備していく時に入ってきているのである。
  日本も、「産みの苦しみの初め」として 確かに「地震」が起こっているので、例外ではなく、リバイバルする。




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